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単一元素金属における54番目の超伝導現象を発見― サマリウムの高圧力下磁気測定をはじめて成功 ―

更新日:2021.08.24

単一元素金属における54番目の超伝導現象を発見

― サマリウムの高圧力下磁気測定をはじめて成功 ―

本学工学研究院基礎科学研究系の美藤正樹教授の研究室は、サマリウム(原子番号62の元素。Sm)の高圧力下磁気測定に世界ではじめて成功し、20万気圧より高圧の領域に超伝導特有の反磁性信号を観測しました。今後、同一条件下での電気抵抗測定による検証を待つことになりますが、単一元素金属において54番目の超伝導現象の発見を得たことになります。

ポイント

  • サマリウムの高圧力下磁気測定を世界ではじめて成功
  • 単一元素金属における54番目の超伝導現象の発見
  • 未開拓である極限環境下のサイエンスへの寄与が期待される


今回の発見は、本学の美藤研究室が保有する高圧力下精密磁気測定装置によって、サマリウムの高圧力下磁気測定が初めて成功したことによるものです。高圧下での構造相転移に連動して、磁気特性が反強磁性から強磁性に変化し、最終的にはその強磁性も消失することが明らかになりました。また、強磁性の振る舞いが消失する圧力下で、超伝導の発現を強く支持する大きな反磁性信号が観測されました。下図の横軸 圧力vs.縦軸 磁気信号強度のグラフで見ると、「加圧によって黄色が赤色に代わり、黄色に戻った後に、6K以下で青色になる」ことに対応しています。この青色の反磁性信号の磁場依存性は、超伝導状態であることを示唆する完全反磁性特有の振る舞いを見せています。今後、同一条件下での電気抵抗測定による検証を待つことになりますが、単一元素金属における54番目の超伝導現象の発見となります。



元素周期律表には118の元素がありますが、常圧下で温度を下げると超伝導になる元素は29種、さらに高圧下の低温で超伝導になるのは追加で24種が見つかっていますが、この発見は最後の単一元素超伝導になる可能性があります。

今回の研究で使用された測定技術は、高圧環境下で形成される隕石を実験室で再現し、その磁気特性を調べる際にも使用でき、今後、未開拓である極限環境下のサイエンスを開拓することが期待されます。


なお、この研究成果は、米国物理学会の学術論文誌「Phys. Rev. B」(2021年8月23日 ※米国時間)に掲載されます。


*1 超伝導:ゼロ抵抗と磁束排斥効果を有する電気伝導現象。高磁場発生、磁気浮上、電流輸送、電子デバイスに利用される社会構造を変革し得る物理現象
*2 完全反磁性:超伝導体の中に磁束が侵入することを妨げるために、磁場印加によって磁場印加方向と逆向きに磁気信号を発現する際に観測される現象


■ 論文の詳細情報


タイトル “Magnetic measurements of antiferromagnetic Samarium at high pressure to 30 GPa using a SQUID-based vibrating coil magnetometer”
著者名 Masaki Mito, Hirotaka Kondo, Taiki Arase, Kunihiko Irie, Seishi Takagi, Hiroyuki Deguchi, Takayuki Tajiri, and Mamoru Ishizuka
雑誌 Physical Review B
DOI 10.1103/PhysRevB.104.054431

※ 本研究は JSPS科研費JP17H03379, JP19KK0070の助成を受けたものです。



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<研究内容に関すること>
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